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行政書士法人CLA

【改正建設業法解説シリーズ】合併の手法

不定期ではありますが、許可実務において、非常に影響の大きい令和2年10月の建設業法改正についての解説を実務的な立場から行っていきたいと思います。

建設業を営む全ての方のご参考になれば幸いです。

本日は、合併認可申請について解説します。

合併の手法


吸収合併・新設合併は、経営者の皆様からすると、合併比率や契約内容に目が行きがちですが

(もちろんとても重要な要素です!)、建設業の許可業者の場合、「許可の承継」の方に、より注意を払わないと、営業戦略に多大な影響を及ぼします。

特に経審業者は、P点にも関わってきますので、許可承継と合併経審は最重要課題と断言できます。

この点、許可実務に関して、合併事案であっても、承継会社と消滅会社が、同一都道府県内にあったり、業種が全く同じような場合は、許可の変更届だけで十分な場合もあり、それほど影響はないかもしれません。

問題は申請(許可換え新規申請や業種追加申請)が必要な場合です。

承継会社と消滅会社が、2つ以上の都道府県にまたがる場合(県知事許可から大臣許可へ)や、

承継会社と消滅会社が、それぞれ全部又は一部違う業種を取得している場合(業種追加申請)は、

これまで、合併効力日より、営業所が他県にまたがったり、業種が増えたりするので、原則合併効力日以降、申請をする必要がありました。

この場合、申請から許可が出るまで、一定の期間があります。

(県知事の場合は1ヶ月程度、大臣の場合は3~4ヶ月程度)

この期間は、許可がないので、一部の営業所や業種で営業・契約・施工ができなくなっていました

(許可の空白問題)

これを回避するためには、様々な手法を講じなければなりませんでした。

これまでの合併


これからの合併


今回の建設業法改正では、新たに、事前認可申請制度が新設されました。許可の空白問題を解消する趣旨でできた制度です。

これにより、合併前に認可を受ければ、合併効力日から当然に、承継会社は消滅会社の許可状況を承継することができます。

現在、建設業界は、元々の少子高齢化に加え、コロナ渦の影響で、技術者不足が深刻です。

当然、M&Aの一つとして企業合併を検討されるケースも増えています。

合併効力日にスムーズな営業・契約・施工が可能となるこの認可制度をぜひ検討してみてください。

事前認可申請制度の注意点


ただし、注意点があります。

  1. 認可申請書は許可申請書と様式が異なります。
  2. 認可申請書は連名+共同押印となります。
  3. 承継会社と消滅会社で業種が全部又は一部異なる場合でも認可申請は可能ですが、一般許可と特定許可に違いがある場合は承継できません。
    このケースでは廃業届と新規申請が必要になります。

※具体例は下の図を参照

  1. 認可申請には、簡易合併(会社法796条2項)でない限り、株主総会の決議録が必要となります。もし、債権者異議手続(会社法789条、799条)や、反対株主対応(会社法785条、797条)を終えた後に、株主総会を開催するケースは、合併のほとんどの手続きが終わってからでないと、株主総会決議録ができず、そこからの認可申請→認可となると、合併手続きと認可の間にまた空白が生じるリスクもはらんでいます。
    許可の空白問題を解消できても、合併手続きと合併効力日が認可の影響で間延びする新たな空白問題といえます。合併効力日から逆算して、十分に余裕なスケジューリングが大切となってきます。
    ※この点一般貨物運送業許可や、風俗営業許可の合併認可申請には、原則株主総会決議録まで求められておりませんので、建設業特有の問題といえます。

建設業許可が絡む合併は、細心の注意と、確かな実務知識とスケジューリングが承継成功の9割を占めるといっても過言ではありません。

ご不安やご不明点が生じたら、気軽に弊所に相談してみてください。

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