許可実務の現場でよく見かける「登記の管理忘れ」について、まとめました。
ご自身の会社の登記(履歴事項全部証明書)を確認してみてください。
●取締役退任・辞任の落とし穴~経営業務管理責任者要件~
取締役・代表取締役の退任について、しばしばトラブルになるのが経営業務管理責任者要件です。
経営業務管理責任者要件は、原則、取締役5年以上の建設業経営経験が必要ですから、取締役5年以上の方が、勝手に退任・辞任してしまうと、許可の取り消し事由となります。
もう引退する頃だと自分で判断したり、司法書士さんからアドバイスされたりしても、ちょっと待ってください!
経営業務管理責任者要件に引っかからないか、十分に確認してください。
●3名未満取締役と監査役の落とし穴
取締役会設置会社(取締役の互選で決めるのではなく「取締役会」)は注意していただきたいのですが、まずは条文を紹介します。
会社法327条2項
取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計
参与設置会社については、この限りでない。
会社法331条5項
取締役会設置会社においては、取締役は、三人以上でなければならない。
まとめると、
取締役が3人以上いる場合は取締役会を設置することができるが、その場合は監査役を置かなければならないということになります。
こういった会社法上のルールに沿って、取締役会・監査役を設置している会社が、取締役が3人いたところ、1人引退に伴う退任をすることで2名となり、補充をしなかった場合どうなるでしょう。
取締役が2名ですから、取締役会設置会社は取締役非設置会社への「定款と登記の変更」が必要です。
また、取締役会がなくなったわけですから、監査役も義務でなくなります。監査役設置会社から監査役非設置会社への「定款と登記」の変更が必要になるかもしれません。
ちなみに建設業許可における変更は
・取締役
・定款
が必要となります。
結構失念していることが多いので十分に気をつけてください!
●増資
資本金の変更(増資)を税理士さんと相談して実行したとします。このときも登記の変更が必要です。
また、その後建設業許可の変更も必要です。
●重任登記の懈怠と経営業務管理責任者要件
昔の会社では、商法が適用され、会社の取締役任期は一律2年でした。
しかし、平成18年5月に会社法が施行され、取締役の任期は1年以上10年以内の間であれば自由に設定することができるようになりました。この制度を利用して多くの会社が取締役任期を10年に伸長しました。
ところが、問題も続出しており・・・10年にすると、10年後に役員変更・役員重任することを忘れてしまうのですね。
2年ごとの周期が10年に1回になったのですから仕方ありません。
法務省はこの自体を重く捉え、毎年、12年間登記をいじっていない会社は「みなし解散」として会社の解散を進めています。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00083.html
怖いですよね。いきなり会社が解散させられているということもあるのです(もちろん法務省から事前に通知書は発送されます)。
特に建設業許可を取得している場合は、許可を持つ会社そのものがなくならないよう今すぐ登記を確認してください。
また、もう一つ問題があります。この画像を見てください。

これは、取締役の重任登記に懈怠があり、慌ててあとから登記をした事例です。
詳しく時系列で説明すると
平成19年7月 取締役重任(任期10年)
平成30年12月の時点で、「平成29年7月の段階で重任登記すべきだったこと」に気付いて慌てて登記をする。
しかし、慌てたために平成21年7月31日退任、平成30年12月就任という登記をしてしまった。
つまり、平成21年8月から平成30年12月まで取締役が誰もいない会社になってしまった。
いかがでしょうか?実態は取締役がいたのに、登記上つじつまが合いませんよね?
問題なのはここからで、建設業許可の更新申請をする際、この登記を提出したら、許可行政庁によっては、「取締役がいない時期がある→経営業務管理責任者が途切れている。」「許可取り消しの上、再度新規で取り直してください」と指導されることも可能性として大いにあります。
最近こういった事例が本当に増えているので、今一度「重任登記」がなされているか、「そもそもうちの会社の任期は何年なのか」を確認してみてください。