経審改正(2021年4月施行) どこよりも詳しいW10の概要 その2【CCUS能力評価基準】
皆様の関心がとても大きな2021年4月施行の経審改正は、建設産業の転換点といっても過言ではないくらい、非常に大きな改正となっております。
なぜなら、国交省が今後どのような点を評価していくということが非常に垣間見える改正だからです。
今日は、技能者レベル向上評価のからくりです。
1.前提~評価のポイント~
国交省は、今回の改正で、「継続学習」、「継続経験」を重視することを明らかにしました。
つまり、単に国家資格等を取得することで評価していた技術力(Z点)に加え、これら技術職員をはじめとした技術者や技能者が「継続的に学習・経験をすること」を社会性等(W点)の評価項目に加えたのです。
2.技能者とは?
今回の経審改正で初めて出てきた「技能者」。これは技術者とは異なります。
すなわち、技能者とは、建設工事の施工管理のみを行う者(技術者)以外の現場労働者です。
財務諸表でいうと、「労務費」に入る人件費で、「経費」のうちの「人件費」に入る技術者とは分けられることになります。
今までは、技術職員(資格者等)のみが経審評価対象でしたが、今回の改正より、技能者も評価対象となりました。
3.ここで整理! 技術職員・技術者・技能者
今回の経審改正では、「技術職員」、「技術者」、「技能者」の三者が登場するようになりました。 とても重要な定義ですので、ここで整理しておきます。
「技術職員」
・・・専任技術者・監理技術者・主任技術者になれる者(1級・2級資格者や10年実務経験者等)
これまで同様、「技術職員名簿」(20005帳票)に掲載し、Z点として加点されます。なお、今回の改正で一級技士補(一級第一次合格者)も加点対象となりました。またCPD単位取得すれば、W10として加点されます。
「技術者」
・・・ 「技術職員」+二級技士補
建設工事の施工管理に従事する者ということになります。具体的には、上記「技術職員」と二級技士補も対象となります。技術職員名簿(20005帳票)に掲載することができない二級技士補は、様式第4号「CPD単位を取得した技術者名簿(技術職員名簿に記載のある者を除く)」に記載します。
この技術者もCPD単位取得すれば、W10として加点されます。
「技能者」
・・・建設工事の施工管理のみを行う者(技術者)以外の現場労働者
技術職員を含む技術者以外の現場作業者です。会社の総従業員-事務職員-技術者(技術職員含む)=技能者といえます。(兼業がある場合は割愛します)
一般的には資格を有していない方といえます。
技能者は、様式5号「技能者名簿」に記載します。
技能者は、COUS能力評価基準でレベルアップすれば、W10として加点されます。
なお、技術職員・技術者・技能者全て6ヶ月を超える常勤が求められます。
また、技術者と技能者の兼任は可です。(ある工事では施工管理をするが、別の工事では現場作業をするなどの場合どちらにもカウント可)
4.技能者数の定義及び確認資料
技能者数は、審査基準日における許可を受けた建設業に従事する職員のうち、審査基準日以前3年間に、建設工事の施工に従事した者であって、作業員名簿に記載する者でカウントします。
ただし、「審査基準日3年間」の作業員名簿を毎回経審で審査することは負担が大きいので、多くの審査行政庁(大臣:関東地整、埼玉県等)は「審査基準日時点で稼働している工事現場」の作業員名簿でよいということになっています。
逆に、「審査基準日時点で稼働している工事現場」がない場合は記載できず評価対象にならないのではないか?と言う問題が生じています。この点はまだ審査行政庁でも見解が定まっておらず、今後の早急な決定を臨みます。
ちなみに、東京都は【東京モデル】ともいうべき、独自の確認方法をするようです。
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/sinsa/pdf/kisairei.pdf
わかりやすく言うと、審査基準日以前3年間のどの作業員名簿でも良いが、6ヶ月超え常勤確認(標準報酬決定通知書等)で絞りをかけますよ、ということです。
この東京モデルは非常に筋が通っていて、かつ、申請者・審査側どちらにも余計な負担がない確認方法だと言えると思います。
なお、作業員名簿は、
氏名、生年月日及び年齢、職種、社保加入状況等の記載を確認します。
どの欄を確認するか、関係ないところは黒塗りとするかは、審査行政庁によって異なりますので事前の確認が必要です。
5.技能者レベル向上とは?
CCUS(建設キャリアアップシステム)に基づいた職種経験履歴と保有資格で能力評価基準が各団体で定められています。
その団体が認定した能力評価基準を使ってレベル1(ホワイト)→2(ブルー)→3(シルバー)→4(ゴールド)へとレベルアップすれば、経審加点がされる仕組みとなっています。
各団体の能力評価基準はそれぞれ細かく定められていますが、例えばとして、 弊所で電気工事技能者の対策をまとめたページを挙げます。
CCUS(建設キャリアアップシステム)は、国交省が建設業許可の有無問わず全ての建設従事業者・従事者に使ってもらうシステムです。昨年までは様子見をしていた業者様も、「元請から現場に入らせないと言われた」とか「経審で影響がある」という声がちらほら出てきて、今年になって登録数も増えてきました。
例えば埼玉県は令和3年3月末現在で許可業者数の約3割が登録しています。
昨年と今年の経審改正で2年連続CCUSの評価が新設されました。また、自治体の入札総合評価や主観点でも多く加点対象となってきました。もはや無視出来ない状況となってきています。
CCUSが評価の対象となっている現在において、CCUSの登録がまだ済んでいないというのは、「対応が後手後手になっている」と言っても過言ではありません。
a1b31090fdef677ae09fb569206cff7d6.技能レベル向上者数の定義及び確認資料
技能レベル向上者数は、認定能力評価基準により受けた評価が審査基準日以前3年間に1以上向上(レベル1からレベル2等)した者の数と定義づけられています。
確認資料としては、各団体が発行する能力評価(レベル判定)結果通知書となります。
7.CCUSの能力評価基準でレベルアップした人がいないorそもそもCCUS登録をしていない場合でも経審で分母となる技能者数は記入する必要があるの?
ここで、その他の審査項目(社会性等)(20004帳票)を見てみましょう。
最終欄の項番62に技能者数の欄があります。
この評価は簡単に申し上げると、分子が技能レベル向上者数、分母が技能者数(ただし既にレベル4になった方を分母から控除してあげて、割合を高くしてあげる救済措置あり=控除対象者数)ですから、仮に、CCUSの能力評価基準でレベルアップした人がいないorそもそもCCUS登録をしていない場合、つまりこのW10で加点が全くない場合でも分母となる「技能者数」をカウントし、記入し、作業員名簿等の提出が必要なのか、という問題に当たると思います。
この点については、審査行政庁によってバラバラで、事前の確認をお勧めしますが、埼玉県も東京都も「CPDもCCUSもどちらも加点対象者がいない場合は未記入でも可」という取扱をするそうです(令和3年4月時点)。
ただし、今後は技能者についても確実に記入が求められますし、そもそも加点が1でもあるのであれば正確に記入・確認資料提出が必要ですので、今から作業員名簿管理・技能者数管理を徹底することをおすすめいたします。
8.経審受審業種以外の業種における技術者がW10の対象となるか
ここで、経審受審業種以外の業種における技術者がいる場合は、この「技術者」に含めて加点対象とすることができるかが問題となります。
この点は、先週も5番で問題提起させていただきました。
例えば
- 入札対策で、土木一式と舗装の2業種で経審を受審しているが、建設業許可として建築一式を持っている場合の、建築一式における技術者(建築施工管理技士等)がW10の加点対象となるか
- とび土工を土木一式に積み上げて経審受審している場合は、とび土工で経審受審できないのでとび土工の実務経験10年技術者は技術職員名簿に掲載できないが、この技術者はW10の加点対象となるか
といった事案が考えられます。
この点は、弊所としても埼玉県・東京都にそれぞれ確認し、「W点の趣旨(建設業者としての社会性評価)からしても経審業種に限定する必要はない」という回答を得ることができました。他の審査行政庁については、各自事前の確認をしていただいたほうがよいと思います。
9.6カ月を超える常勤確認
なお、「技能者」にも、技術職員と同様に「審査基準日前6カ月を超える常勤確認」が必要です。健康保険・厚生年金保険に係る標準報酬決定通知書等で確認します。ここは失念しがちなので、注意して下さい。
10.CCUS連動の難しさ
これからの経審は、CCUSが無視できません。
CCUSでの選択職種をどう選択するか、技能者の保有資格は何か、管轄する能力評価基準はどれか、その能力評価基準は経審上どの業種で加点されるかをうまく連動させて検討していかないと、せっかくCCUSで就業履歴を貯めても、全く無意味な履歴になる可能性があるからです。
例えば、土木業者が、土木一式もしくはとび土工で経審加点を狙うとします。
e9d97037b12adbe85c1cf37dc58d2e97技能者の職種は「土工」を選択するとします。
ここにあるとおり、レベルアップするには、一定の就業履歴と決められた資格がないといけません。
(ただし、特例として令和6年3月31日までは就業履歴について、これまでの経験を遡って申請することができます)
ここにない資格を取って、一生懸命就業履歴を貯めても、経審では一切生かされない可能性もあるのです。そもそもCCUS登録時に適切な職種の選択をしているか、保有資格を全て登録されているかが、将来経審加点につながるかどうかの分かれ目になります。
今回の経審改正はCCUSとの連動性・横断的な理解が非常に重要で、中長期的な戦略と即効的な対策を織り交ぜて行く必要があります。ぜひ、社内で取り入れて、経審P点や入札格付けランクアップのきっかけとしてください。
当事務所では、経審P点や入札格付けランクアップについて、建設業者様にとって最適なご提案を行います。また建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録代行も承っております。
いつでもご相談ください。