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行政書士法人CLA

【認可】どこよりも詳しい事業承継認可制度の解説 シリーズ3

こんにちは。

どこよりも詳しい事業承継認可制度の解説、今日はシリーズ3ということで、話していきたいと思います。

なお、このシリーズ3からは、いよいよ各論部分にも触れていきたいと思います。

1.合併とその中の吸収合併


シリーズ3では、合併認可、その中でも「吸収合併」の認可についてクローズアップしていきたいと思います。まずは条文を読んでみましょう。

この法17条の2はとても難解ですよね。

慣れるまでは、弊社があえて赤枠で囲った部分を中心に読んでみてください。

この条文をそぎ落としてみると、

「合併消滅法人があらかじめ合併について認可を受けたら、(合併存続法人は)建設業者(許可業者)としての地位を承継する。」

ということに集約されると思います。

合併は、2個以上の会社が契約によって1個の会社に合体することを言います。

大きくわけて吸収合併と新設合併があり、

・吸収合併は「会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるもの」(会社法2条27号)

・新設合併は「二以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるもの」(会社法2条28号)

とそれぞれ定義されています。

合併が行われる実務上の場面においては、

①会社規模の拡大、②業績不振や後継者不在の会社救済、などです。

※注意

特例有限会社は、吸収合併存続会社と吸収分割承継会社(承継先)となることができません(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律37条)。

吸収合併存続会社や吸収分割承継会社になる場合は、株式会社への変更が必要です。吸収合併消滅会社・吸収分割消滅会社(承継元)になることはできます。

では、今日のテーマである吸収合併を次の項で詳しく紐解いていきましょう。

2. 吸収合併のスキームと認可申請の手順


吸収合併は上の図のように、合併消滅法人が合併存続法人に吸収される場合を指します。

三社合併など、合併消滅法人が複数の場合もあります。

事業譲渡との違いは、事業譲渡が、事業としての建設業の売却が取引目的物であり、登記手続を行わないことに対し、合併は、合併消滅法人そのものが取引目的物で、登記手続を行うことです。

吸収合併は、企業規模増大や業績不振、後継者不在の場合に活用されることが多くみられます。

実務におけるM&A(合併・買収)の現場では、新設合併に比べ、登録免許税等が安く済むことが多く、吸収合併が圧倒的に一番使われる手法といえます。

建設業法における合併認可申請は、図の通り、合併効力発生日前に行う必要がありますが、合併認可申請より前には、会社法上の手続を経る必要があります。

具体的には、合併消滅法人・合併存続法人いずれも、

・取締役会等による合併契約の承認(2条7号、348条、362条2項)、

・吸収合併契約締結(749条)、書面備置(782条、794条)、

・官報公告(789条2項、799条2項)、

・反対株主等保護手続(784条の2、785条、796条の2、797条)、

・債権者異議(789条、799条)

・株主総会決議(783条、795条)である。(以上この箇条書きの括弧書きは全て会社法の条項。)

これらを認可申請前に行う必要があります。

建設業法における承継認可申請では、株主総会決議録の添付が義務づけられている(規13条の2第2項10号)ということは、これらの会社法上の手続、すなわち書面備置や公告等を経て反対株主保護・債権者保護を行い、問題ない状態で株主が総会で決議を取れるというのが通常の手順であるから、これらの手続を全て経ないと合併認可申請の添付書類である株主総会決議録が存在しないことになります。

(この点、会社法783条、会社法795条の記載が「効力発生日の前日までに、株主総会の決議」としか記載していないので、反対株主保護・債権者保護に関する諸手続よりも前に総会決議を取ることもできるとも読めるが、保護の趣旨に鑑みると妥当でないと思います)。

この点は、株主総会決議録まで求めない一般貨物自動車運送事業や風俗営業許可における合併認可申請よりも厳格ですよね。

なお、簡易合併(吸収合併の対価の額が存続会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額が1/5を超えない場合等:会社法784条2項、会社法796条2項)に該当する場合は、株主総会承認が不要であるので、合併に関する意思決定を証する書面が必要です(規13条の2第2項10号、事務ガイドライン【第17条の2関係】4.(3))。

今回は以上です。吸収合併は経営するにおいて、必ず頭の片隅に入れておいた方がよい手法ですが、許認可の承継が一番ネックです。

ご覧の通り、数多の手続を寸分の狂いもなく実行していく必要があり、

きめ細やかな対応が求められます。

吸収合併のことでお困り・お悩みがございましたら、弊社までお問い合わせください。

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