【認可】どこよりも詳しい事業承継認可制度の解説 シリーズ2
こんにちは。
どこよりも詳しい事業承継認可制度の解説、今日はシリーズ2ということで、話していきたいと思います。
●1.承継の要件
以下の4つです。
(1)「あらかじめ」(事業譲渡・合併・分割)
事業譲渡・合併・分割の3承継に関しては、承継の事実より「あらかじめ」(法17条2第1項・第2項・第3項)認可を受ける必要があります。
●承継の事実
・・・事業譲渡は「当該譲渡及び譲受けの日」(法17条の2第1項)、合併は「当該合併の日」(法17条の2第2項)、分割は「当該分割の日」(法17条の2第3項)
●「あらかじめ」
・・・各行政機関の標準処理期間を参考に承継の事実の前。
※相続認可は「被相続人の死亡後30日以内」
(2)「許可に係る建設業の全部(以下単に「建設業の全部」という。)」
許可を受けている業種の全て。承継元の一部業種のみの承継認可は認められず、許可制度の中で解決していく必要があります。
なお、合併(法17条の2第2項)には「建設業の全部」という文言が登場しませんが、合併の法的性質上、
「消滅」会社の権利義務を当然に「承継」する(会社法750条1項、752条1項、754条1項、756条1項)ことが関係していると推測できます。
(3)承継元と承継先が、同一業種について異なる区分の許可を受けていない
この要件は、法17条の2、17条の3の各条項に括弧書きで記載がある部分です。
法17条の2に「建設業の全部」とあるとおり、事業承継の認可に際しては、許可を受けている建設業の一部の許可のみの事業承継については認可できず、被承継人である建設業者が許可を受けている建設業の全部を承継人が事業承継する必要があります。
許可を受けている建設業の一部の事業承継を行う場合は、被承継人は当該許可を廃業した上で、承継人は再度当該建設業の新規の許可を受ける必要があります。(「国土交通大臣に係る建設業許可及び建設業者としての地位の承継の認可の基準及び標準処理期間について」第12)。
詳細はこの下記国交省の図が一番わかりやすいので、ご確認ください。
a45b48d8b80959e8b0314868cc0c8df3この図が具体例となりますが、「鉄筋業」が一般と特定で異なる場合は、許可の区分が異なるため、全部承継ができません。このケースで認可制度を使う場合は、承継先(存続会社)で鉄筋工事業を事前に一部廃業し、鉄筋工事業がない状態にした上で、認可申請をすることになります。
(4)承継後の全ての業種について、承継先が許可の要件を満たしている
これは、法17条の2第4項が根拠となるが、建設業許可の承継である以上当然のことですね。
●2.承継の効果
(1)承継対象
「許可に係る建設業の全部」について「建設業者としての地位を承継する」。
●「許可に係る建設業の全部」
・・・許可を受けている業種全て
●「建設業者としての地位を承継する」
・・・法第3条の規定による建設業の許可(更新を含む。)を受けたことに
よって発生する権利と義務の総体。承継元の受けた法に基づく
監督処分や経営事項審査の結果についても、当然に承継すします。
法第45条から第55条までに規定される罰則については、建設業者としての立場にかかわらず、罰則の構成要件を満たす違反行為を行った被承継人という法人(個人)そのものに対して刑罰を科すものであるため、当該刑罰については、承継人に承継されません。
(建設業許可事務ガイドライン【第17条の2関係1.】)
(2)許可の有効期間
建設業許可の有効期間は5年ですが(法3条3項)、これは、許可のあった日から5年目の許可があった日に対応する日の前日をもって満了します(例:令和6年3月31日に許可された場合、5年後の令和11年3月31日の前日令和11年3月30日が満了日)。
一方で、承継認可では、認可申請時に改めて許可基準の審査を行っているため、当該承継日に承継元は許可を受けたものとみなし(法17条の2第6項本文。同時に従前の許可効力を失う)、
承継後の許可の有効期間については、許可の残存期間にかかわらず、当該承継の日の翌日から起算するものとしています(法13条の2第7項)
(例:令和6年4月1日承継日の場合。承継日当日の令和6年4月1日及び+承継日翌日令和6年4月2日~令和11年4月1日が許可有効期間)
認可後の最初の許可の通知書は5年+1日の期間が書かれることになります。
(3)承継における許可番号の取扱い
承継先が事業承継後に使用する許可番号については、原則的には承継元のものを引き続き使用することとしますが、承継先が建設業者である場合は、承継先が使用する許可番号を選択することができます(許可事務ガイドライン【第17条の2関係】7)。
ただし、許可権者が都道府県知事から国土交通大臣に変更となる場合や、他の都道府県知事許可に変更となる場合など、建設業の許可を行った者と認可を行う者が異なる場合は、番号が新たに付与されるので、認可申請書の「引き続き使用する許可番号」には記入しないことになります(様式22号の5、22号の7、22号の8の各載要領参照)。
★★★承継認可と専任技術者★★★
承継認可においての必要提出書類は規13条の2に細かく列挙されていますが、経営業務管理責任体制に関する書類は、それぞれ1項5号、2項6号、3項6号に明記され、認可申請時に誰がどういう基準を見たいしているかどうかを審査することが明記されているといえます。
ところが、専任技術者についての提出書類が明記されていないのです。そうすると誰がどの基準でどの営業所のどの業種で、ということの審査がされないようにも思えます(この点は規13条の2第6項を使って「必要と認める書類を提出」させる行政機関もあるでしょう)。
しかし、この点は認可制度の原則に立ち返り、承継元の「地位を承継する」、すなわち承継元の許可にかかる建設業の全部(全ての業種)を承継ということで、そこに付随している営業所専任技術者も承継することが原則となります。
つまりは、承継元の専任技術者が承継効力日の承継先専任技術者であるというのが大原則となります。
そして、承継元が有しておらず承継先のみが有している許可業種の専任技術者は、承継先の専任技術者が承継効力日以降も専任技術者になるべきでしょう。
また、承継元・承継先どちらも有している許可業種の専任技術者は、どちらの専任技術者でもいいだとか、承継元を優先させるべきだろうなど色々な意見がありますが、多くの行政機関では、許可番号を引き継ぐ方の専任技術者と指導していることが多いかもしれません。(この点は許可番号を引き継ぐ方=申請データの管理がしやすいといったシステム上の背景があるのかもしれません)。
いずれにせよ、各行政機関には、専任技術者の承継方法について今一度根拠を明示しながら取扱いを再考していただきたいし、申請者側は、承継の混乱で専任技術者という許可基準が満たせていないということがないよう、十分な注意が必要です。
なお、承継効力日当日に上記の取扱いに沿った専任技術者以外の者を専任技術者に変更する場合は2週間以内の届出が必要です。