【経審】工事経歴書を制する者は経審を制する!
こんにちは。
今日は、経営事項審査において一番重要な「工事経歴書」の位置づけ、ポイントについて解説していきたいと思います。
この話題は、
・公共工事入札に今後挑戦していきたい方
・イマイチ経審P点アップができていない方
に役立ちます。
●1.工事経歴書とは?
工事経歴書とは、建設業法6条1号において、申請時の添付を義務づけられている法定書類です。
申請時のみならず、決算変更届(事業年度終了報告)にも添付が義務づけられています(法11条2項)。
工事経歴書は、なぜ添付が義務づけられているのでしょうか?
それは、建設業法が法の目的とする「発注者の保護」から説明できます。
もう少し具体的に言うと、他の書類とともに工事経歴書は閲覧書類です。各地方整備局や都道府県の窓口に行くと申請書類が閲覧できます。工事経歴書は、閲覧できるということで、この建設業者がどんな工事を普段請け負っているのか「発注者が判断することができる」のです。
したがって、工事経歴書は、工事の経歴をテキトーに書いて出せば良いものではなく、大変重要な書類なのです。
●2.経審における「経営規模(完成工事高=営業力)のX1点」
タイトルにも書きましたが、「工事経歴書を制する者は経審を制する!」と言っても過言ではありません。
経審P点を構成する点数配分ですが、経営規模(完成工事高=営業力)のX1点は、全体の25%を占めます。
もちろん技術力(Z点)や経営状況(Y点)、社会性(W点)ももちろん無視できないですが、なんと言っても建設業者が経審において、最初に、一番意識しなければならないのは、経営規模(完成工事高=営業力)のX1点であることは昔から変わっていません。
●3.経営規模(完成工事高=営業力)から工事経歴までの紐付け
下の図を見てください。
経営規模は完成工事高ですから、損益計算書の完成工事高(売上高から兼業売上を除いたもの)が影響します。そして、この損益計算書の完成工事高は、「直前3年の各事業年度における工事施工金額」の合計と一致していなければなりません。
さらに、この「直前3年の各事業年度における工事施工金額」の各業種の合計欄は、工事経歴書の合計と一致していなければなりません。
また、これもとても見落としがちなポイントですが、粉飾決算でないことを証明するために、税務申告用の消費税確定申告書の課税標準額との兼ね合いも確認しなければなりません。
損益計算書は、経営状況分析にも提出するわけですから、Y点(経営状況)とX2点(利益額)にも大きく影響します。
いかがですか?
一言に、「経営規模(完成工事高=営業力)は損益計算書の完成工事高」だからと簡単に考えていると、その裏には、直前3年の各事業年度における工事施工金額や、消費税確定申告書にも注意しなければならないし、 そしてその発端をたどると「工事経歴書」に行き着くことがわかります。
損益計算書の完成工事高は工事経歴書から始まっているのです。
●4.工事経歴書の書き方を見れば、書いた人の実力がわかってしまう!?
工事経歴書は、下記の様式で、とてもシンプルです。
また、この書き方については、正直各地方整備局や各都道府県が出している手引き等を見てもどれも似通った記載例を載せているくらいであまり詳しく書いていません。
したがって、手引きの説明や記載例を見ながら書いても、なんかしっくりこないというか、やればやるほど「これで良いのだろうか?」という不安な気持ちにさせる、悩ましい法定書類なのです。
なぜか?
手引きは、あくまで国民・県民への行政サービスの一環です。法令ルールを全て網羅しているわけでもないし、よくあるケースを最大公約数的に解説しているだけだからです。
また、工事経歴書は、冒頭で言及したとおり、そもそも建設業「許可申請」での提出書類となっています。
経審でも使用するのですが、審査行政庁が経審点数アップのために手引き等で書いてくれないのは当たり前ですよね。
しかしながら、工事経歴書は、1枚の中に建設業法の様々なルールを見える化しなければならないので、実はとんでもない落とし穴書類なのです。
下の図をご覧ください。
多くの会社の許可申請担当者さん、多くの行政書士さんは、建設業法の中でも許可要件(経営業務管理責任者や専任技術者など)に注目し、そのあたりのことは詳しかったりします。また前述の「手引き」や市販の書籍でもこの辺の情報は十分すぎるくらいあふれています。
しかし・・・工事経歴書では、許可要件以外の建設業法ルールがないと、特に経審では思わぬ落とし穴が待っています。
- ・配置技術者ルールは大丈夫か?
- ・特定許可を取らないと違反にならないか?
- ・現場専任に違反している工事はないか?
- ・専任任技術者が配置技術者に出ている工事はないか?
- 特例要件に合致しているのか?
- ・経審上の技術職員と工事経歴書上の配置技術者の違いは理解しているか?
- ・専任技術者にはなれて配置技術者にはなれない「出向社員」が
- 工事経歴書に書かれていないか?
- ・特に大臣許可において、専任技術者が配置技術者になれる特例要件の一つ
- 「専任技術者の営業所で締結した契約」工事が守られているか?
- ・そもそも工事の振り分けが適正になされていて、違う業種のものが入っていないか?
- ・業種に応じた配置技術者が記載されているか?
こんな感じで、多くのことを同時並行的に確認して作り上げるのが「工事経歴書」なのです。
さらに、経審では、虚偽申請でないことの確認のために、各業種上位(※)は契約書もしくは注文書+請書の提示をします。
※・・・上位3件の基準について、埼玉県・関東地方整備局(大臣)は金額順上位3件、東京都は記載順5件と異なるのでこちらも注意!
いかがですか?
これだけのことを意識して書いているか?
意識して書いている人に依頼できているか?
もう一度振り返ってみてください。
これだけ奥深い工事経歴書があまり意識せず作られているということは、最終的に損益計算書の完成工事高、X1点にも大きく影響している可能性があります。
実際にこの点は、弊所でも多くの相談をいただく点でして、相談者さんの持参いただいた過去の工事経歴書を見ると書いた人の実力も手に取るようにわかってしまいますし、きっとX1点についてあまり対策をしていないだろうな、手引きや役所に言われた通りになってしまっているだろうな、と想像せざるを得ないケースもたくさんあります。
●5.今一度経審対策の基本に振り返ってみましょう
経審は、公共工事を元請で受注するために、全国共通の審査項目で共通の点数(客観点)を出すものです。つまり全国共通のルールがあります。おびただしい数のルールの中に、経営規模(X1点)のルールもあり、さらには、工事経歴書のルールもあるのです。
このルールの範囲内で、いかに点数を上げることができるか、将来的に点数を上げるために具体的にどうしたらよいか、入札参加資格申請の受付時期に合った適切な対策は何なのかを最大限に考えることが「経審対策」です。
例えば、土木業者で、土木一式、とび土、舗装、しゅんせつ、水道施設、解体の6業種受審するとして、
「公共工事入札は最もどの業種に力を入れたいのか」
「舗装に力を入れたいとして、舗装の工事経歴書は完璧に精査したのか」
「どこの自治体でどんな工事(金額・内容)を取りたいのか」
「狙いたい工事内容・金額のために経審は何点取らなければならないのか」
また、例えば建築業者で、建築一式、大工、塗装、防水、内装の5業種受審するとして、
「公共工事入札は最もどの業種に力を入れたいのか」
「どこの自治体の入札を取りたいのか、その自治体ではどんな業種で出されているのか」
「自治体が出している業種と許可がある業種、経審受審業種は一致しているのか、経審の前に業種追加申請の必要がないか」
「専門工事の工事経歴を一式工事に積み上げ(業種間振り替え)をするのが果たして適切か」
こんなことを考えてみてください。
難しければ相談してください。その悩みの先に「工事経歴書」があるのです。
今一度基本に振り返って経審対策をする!弊所は、そのお手伝いができればと思っております。