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行政書士法人CLA

【認可】どこよりも詳しい事業承継認可制度の解説 シリーズ1

こんにちは。

近年建設業界においても「担い手不足」が顕在化し、事業承継事例が増えています。

事業承継は、親族内・親族外の承継とM&A承継の3つがありますが、建設業においては、

とにかく「許可の承継」がうまくいかないと、営業戦略・入札戦略に多大な影響・損害を与えます。

承継において、登記や承継価格よりも許認可の承継が非常に重要であります。

今日より不定期でありますが建設業における承継制度をどこよりも詳しく解説して参ります。

1.これまでの承継手法


以下具体的な事例を設定して解説する。

承継会社 A (埼玉県知事許可)(管)・(消)の一般許可

消滅会社 B (東京都知事許可)(管)・(電)・(消)の一般許可

AがBを吸収合併し、株式会社A(本店:埼玉県、支店:東京都)とします。

この事例の場合、これまでの許可制度では、契約で定めた合併効力日以降、関東地方整備局へ、許可換え新規申請をすることになります。

大臣許可の場合、建設業許可の標準処理期間は約90日とされています。

そうすると、合併したにもかかわらず、許可が下りるまでの約90日間は、埼玉県知事許可が有効な状態ですので、東京支店(旧株式会社B)では契約ができなくなる。これを、いわゆる「許可の空白問題」と言います。

この空白問題を避けるためには、Aが合併前に東京支店を別に【一時的に】新設し、

かつ、東京支店にBから専任技術者((管)・(電)・(消))になり得る技術者を先行移籍させた状態で許可換え新規申請をし、大臣許可業者となった状態で、合併効力日を迎えるように計画し、

合併効力日後、従たる営業所の変更(一時的な営業所から旧Bの営業所への変更)を行うなど、

申請者側に計画の長期化・煩雑さ・人事異動の複雑さなど、多大な負担をかけることが問題となっていました。

2.承継認可制度における承継手法


令和2年10月施行の改正では、このような「許可の空白問題」を防止するために、事前認可申請制度が新設されました。

これにより、上記の事例では、合併効力日前に、関東地方整備局に認可申請をし、認可が下りれば、承継日の翌日から5年の許可((管)・(電)・(消))がAに与えられることになります。

この承継認可制度により、従来の「許可の空白問題」を解消させることができるようになりました。

3.認可申請先のルール


さて、この承継認可制度はとても複雑で法令も多岐にわたります。

たくさんの論点がちりばめられていますが、欲張りをせず今日のシリーズ1では、認可申請先ルール(どこに申請するのか)を整理していきましょう。

以下、図を見ながら考えていきましょう。

【前提】

法17条の2、17条の3各号の承継制度における申請先の記載は、共通しており、各条項の【承継元が建設業者(許可業者)】に限定されています。

したがって、承継元が無許可業者の場合は、承継認可制度の対象外です(というより承継認可をする必要がありません)。

【原則】

①各都道府県に申請する場合

 ・・・承継先(存続会社・相続人)、承継元(消滅会社・被相続 人)

    いずれもが、同一の当該都道府県知事許可か、 又は建設業を営む

    営業所が全て同一の当該都道府県内のみ にある場合

②大臣(各地方整備局)に申請する場合

 ・・・上記以外

※なお、大臣(各地方整備局)への申請は、承継先の主たる営業所が存する地域を管轄する地方整備局が申請先となります。(事務ガイドライン【第17条の2関係】2.(1))

【例外】

 承継元(消滅会社・被相続人)が都道府県知事許可を有し、

 承継先(存続会社・相続人)が無許可業者で承継元(消滅会社・被相続人)

 とは違う都道府県に建設業を営む営業所がある場合・・・認可制度が使えない。

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この【例外】について補足解説します。

そもそも、法17条の2、17条の3は、各項で事業譲渡・合併・分割・相続の認可申請について明記し、申請先を細かく定めていますが、各条項一定の共通ルールがあります。

ここで、承継元が大臣許可の場合は全て大臣認可となり、申請先は全て承継先地方整備局となります。

承継元が知事許可の場合は、承継先が別の都道府県知事許可か大臣許可の場合は大臣認可、

同一の都道府県知事許可であれば当該都道府県知事許可となります。

この法体系に記載がないのが、【例外】なのです。

例えば、承継元Aが東京都知事許可で、承継先Bが埼玉県内に軽微な建設工事を営む営業所がある無許可業者である場合、

法17条の2、法17条の3の各項の中の譲渡人・合併消滅法人・分割被承継法人・被相続人(いわゆる承継元)が都道府県知事許可を受けているときでその下のイ・ロ条項に該当しないのであるから「当該都道府県知事許可」になるはずです。

しかし、承継の結果、複数の都道府県に営業所が存在することになるので、大臣許可を有していなければならない事態になってしまいます。

この場合は、

①承継先Bがまず埼玉県知事許可を取得してから承継認可申請をする

②承継前に承継元Aが埼玉県知事許可業者へ許可換え新規申請をし、埼玉県へ承継認可申請をする

③(承継認可制度を使わず)承継後、東京都へAの廃業届・埼玉県へBの新規申請をする

の3パターンのいずれかで対応することになるでしょう。

もっとも、①は承継前にBが経管・専技をはじめとした許可要件を満たすことができるか、

②はAが承継前に東京都の営業所を廃止する必要があるので現場等に影響が出る、

③は承継日から埼玉県からの新規許可が出るまでの間が許可のない空白期間が生じる、

とそれぞれ問題を抱えています。

なお、例外事例に似た事例として、承継元が東京都知事許可と神奈川県知事許可など2つ以上の許可業者である場合で承継先が無許可業者の場合は、法17条の2第6項第5号の趣旨から、承継認可申請をすることができます。

いかがでしょうか。

法17条の2、法17条の3は一度読んでいただければ実感しますが、とても難解ですよね。

これ以外にもたくさんのトラップが潜んでいます。冒頭でお伝えした通り、建設業の許可承継は、営業戦略・入札戦略に多大な影響と損害が発生するかもしれません。

一つでも間違えると、リスクが大きすぎる手続ですので、確かな知識をと余裕を持って対応する必要があります。

事業承継にお困り・お悩みがありましたら、是非弊所までご相談ください。

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