埼玉県さいたま市大宮区 | 許可・経審・入札の専門事務所

行政書士法人CLA

【許可】主任技術者の配置問題

こんにちは。

先日、ある大手の会社が、2万件以上の現場で主任技術者の配置違反があったことがニュースになりました。現在、特に商社系がメインの会社さんやハウスメーカー系の会社さんのところでは衝撃が走っていることと思います。

弊所にも何件か問い合わせがありました。

この問題は非常に重要であるにも関わらず、なぜかあまり知られていないかもしれませんので、

今回は一度整理してみたいと思います。

※なお、今回はよりわかりやすくするため「主任技術者」のみに言及し、「監理技術者」は扱いません。

主任技術者について詳しく記載ある資料は、色々ありますが、一番わかりやすいのは近畿地方整備局さんが毎年出してくれている「建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者」です。

https://www.kkr.mlit.go.jp/kensei/kensetugyo/index.html

1.法律上の規定


まず、条文を見てみましょう。

建設業法26条1項

建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。

ここで、「建設業者」とは建設業法2条3号にあるように、建設業許可業者のことを言います。

平たく言い換えますと、「建設業許可業者は、工事をするとき主任技術者を置かなければならない(義務)。」ということになります。

2.主任技術者とは?


主任技術者とは何なのかと言いますと、施工管理をする人です。

施工計画の作成・工程管理・品質管理・技術的指導を行います。

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上記の「表:主任技術者、監理技術者又は特例監理技術者の職務」が具体的な職務内容ですので参考にしてください。

では、どういう人がなれるのかといいますと、法26条1項には「第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者」とあります。つまり、建設業許可における専任技術者と全く同じ要件を満たす人となりますね。資格者や実務経験10年などを指します。

こういった方が「主任技術者」として現場にいなければならないのです。

3.軽微な建設工事(500万円未満)


「よく、500万円未満はいいのではないのか?」という質問をいただきます。これに関しては、建設業許可を一切持っていない会社はそれでOKです。

ただし、建設業許可を持っている事業者ですと、500万円未満の工事であっても主任技術者を置かなければなりません。

理由はシンプル!

法26条1項の主語は建設業者=建設業許可業者であって、金額の特例等が一切明記ないからです。

これは、建設業許可を取得した業者は、これまでと異なりあらゆる現場で建設業法の適用を受けますよ!発注者・消費者の保護・安全のために守ってくださいね、という立法の趣旨が背景にあります。

この点、つまり、建設業許可業者であっても500万未満の工事は主任技術者を置かなくてもよいのでは?という誤解も多く、冒頭のニュースもこの誤解(建設業法の理解不足)が背景にあったのだと推測されます。

なお、元請・下請も関係なく全ての現場での配置が必要になります。

4.建設業許可業者の許可未取得業種における軽微な建設工事に主任技術者の配置は必要か?


建設業許可業者は、500万未満であっても元請下請関わらず、全ての工事で主任技術者の配置が義務づけられているのはここまでで説明しました。

それでは、許可業者で、未だ取得していない業種の軽微な建設工事はいかがでしょうか。

この問題は、業種追加申請をする際に、許可を取ろうとする(今まで許可がなかった)業種の工事経歴書に主任技術者の記載が必要かどうかという問題とかなり深くリンクします。

わかりやすく、一例を上げましょう。

内装工事業の許可のみを取得している会社があります。

この会社、許可取得する前までは、あらゆる工事において500万円未満の工事しか請け負えませんが、主任技術者の配置も不要でした。

許可取得後、内装工事業に関しては、500万円以上・未満問わず、元請・下請問わず、主任技術者を配置する必要があります。

それでは、この会社が、許可取得していない大工工事業について、軽微な建設工事(500万円未満)を請け負った場合は主任技術者の配置は必要でしょうか?

この点は、結論から言いますと、条文の改正が必要な時期に来ていると弊所では考えております。

まず、先ほど紹介した法26条1項では、建設業許可業者はあらゆる現場で主任技術者の配置が必要と読めますので、今回の例でも、大工工事業について許可を持っていなくても、その会社が「建設業者」である以上は置かなければならないと素直に読めてしまいます。

ただ、この素直読み、実務の現場ではあべこべ現象が生じてしまいます。

この会社の例で、内装工事業について実務経験10年の専任技術者で許可申請をしたとします。それ以外の資格者もおらず、ぎりぎり10年の実務経験でやっと証明できて内装工事業の許可を取れた会社・・・よくある話ですね。

この会社に対して、大工工事業をやる場合は許可がないから500万未満の工事は請けていいけど、主任技術者を置いてくださいね、となりますと、もう一人資格者か実務経験10年の方がいないと事実上大工工事は一切請けられなくなってしまうのです。

条文を素直に読みすぎると、

  1. 結果的に許可を取った業種以外は、500万円未満すら請けられなくなってしまう=様式3号の「直前3年の各事業年度における工事施工金額」の「その他の建設工事の施工金額」欄が事実上形骸化してしまう。
  2. 会社として、許可業種以外の工事が請けられないので、業種追加の機会を不当に減少させてしまったり、そもそも建設業者のビジネスチャンスを必要以上に阻害させてしまうことにつながってしまう

こういう問題に突き当たってしまうのです。

こういった観点から、

https://www.ktr.mlit.go.jp/kensan/kensan00000052.html

上記のページの一番下「よくあるご質問」の5番に

https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000768950.pdf

「建設業の許可を取得していない業種について、軽微な建設工事

を施工する場合は、主任技術者の配置は必要か。」

「建設業の許可がないため、主任技術者の配置は不要です。」

と明確に回答しています。

※この問題は現在各行政庁で取り扱いが揺れているところです。特に長野県や愛知県など許可業種以外の業種にも工事経歴書の提出を指導している行政庁に関しては、事前の相談とその根拠を聞いて間違いのない対応をオススメいたします。

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